女子便所からこんにちは

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 しかしまあ、法律的に難を逃れても人の感情までは操作できないわけで、当然みんな怖がって俺に近づかなくなった。しかし(いくさ)は別だった。  もともと古い神社の生まれで、無口、それに加えて絶世の美女だったことで同性から疎まれ、いじめを受けていた。「不気味女」だの「幽霊」だのとワンパターンな罵声を浴びせかけ、そして段々とエスカレートして行った。教科書を破く燃やす等の器物損壊、直接暴力を振るうやつもいた。そして決定的だったのが、ヤンキー女グループによるレイプ未遂だ。ヤンキー女とつるんでいた男どもによって行われた犯行だ。頭の中にドングリでも詰まってるんじゃないかっていう程の原始人っぷりだ。  幼馴染である俺は、最初は自分で解決するべきだと考え、手を出さなかったがこれには流石に我慢の限界が来た。(いくさ)を拉致しようとする現場(驚くことにまだ大勢の生徒が残っている放課後の教室だ)に乱入し、徹底的にボコボコにした。男も女もまとめて平等に。  当然の様に、もとの学校には居られなくなった俺は別の高校へ転向し、電車通学となったわけだが、後を追うように(いくさ)も転校してきた。俺は(いくさ)に普通に友達を作って普通に生活をしてほしかったのだが、(いくさ)は俺以外に交友関係は必要ないと言う。そしてその流れのまま、お互い好き合っていることも分かっていたので交際を始めたわけだ。  異性の手も握ったことの無かった俺は舞い上がっていた。(いくさ)も喜んでいたと思う。少なくとも幸せではあったはずだった。しかし(いくさ)の「好き」は依存と混ざり合った「好き」だった。舞い上がったいたとはいえいつかは気付く。俺の場合は三ヶ月で気づいた。俺はたまたま助けたのが俺だから、俺に依存しているんだと考えた。それはフェアじゃない。だから別れることにしたんだ。    別れを告げた時の(いくさ)は酷かった。一瞬何を言われたかわからないと言うような顔になると、すぐに暗い井戸の底のような眼になった。一時間は立ち尽くしていた。俺は罪悪感から言い訳を言い続けたが、(いくさ)はほとんど反応しなかった。そして突然動き出したかと思うと、無言で帰宅した。
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