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そして彼女は一週間学校を休んだ。何度も会いに行ったが拒否された。そして一週間後、ようやく出てきた彼女は吹っ切れた顔でこう言った
「雹也が私の為に行動していることは分かっている。でも私は諦めない」
俺は涙が出そうになった。彼女は俺の独りよがりな行為を許したうえでまだ俺を好きだと言ってくれたのだ。しかし俺は、それが「依存」なのではないかと言う思いを捨てきれないまま今日まで来ている。その間彼女はあらゆる方法で俺の気を引こうとしているのだ。これはある意味戦いなのだ。俺が折れるか、彼女が愛想を尽かすかの。そして今日もいつもの冗談だと、彼女の行為を受け流すのだ。
「一緒に登校する…?」
「ああ。行こうか」
いつもの日常だ。二人並んで歩きだす。そんな見慣れた光景におかしなものが映りこんだ。
公園の木に“罅”が入っているのだ。木が裂けているなどではなく「罅」である。いつも通っているから知っている。あの木は作り物の類ではない。本物の木のはずだ。
「木にひび?」
木の表面にできた割れ目に恐る恐る指を這わせる。
「…雹也。嫌な予感がする。ほっとく方がいい…」
「ちょっと触るだけだって…うーん。妙な感じだ…うおッ!?」
木に這わせていた一気に肘まで吸い込まれた。
「いやいやいやちょっと待てぇ!そう簡単に引きずり込まれてたまるか!」
俺は木に足をつけて思いっきり力を込め、かろうじて拮抗する。
「雹也!」
「来るな戦!」
戦は制止を聞かずに俺に飛びつき、上着をつかんで引っ張る。
「戦!放せ!お前まで巻き込まれる!」
「嫌ッ!私には!あなたしか居ないの!いらないの!放さない!絶対に!」
やはりかと、俺は思った。こんな異常事態だが、戦の俺への依存が戦自身を危険に晒している。ここは意地でも脱出して、戦を危険から遠ざけなくてはならない。
俺は木に両足をつけ、思い切り腕を引っ張る。その甲斐あって、少しずつだが腕が戻り始めた。
「よし!このまま…」
一気に引き抜こうとしたその時、割れ目が一気に広がった。
「くぅ…ッ!?ひ、雹也ぁ!!」
一気に負荷がかかった為か、戦が掴んでいる上着が音を立てて破れた。もう俺を止めてくれるものは無かった。
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