§105

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 綺麗な歌声が響いた。  胸の奥に馴染む美しい音色は龍を宥める。  ──突然、矢の勢いが止まったかと思うと、矢尻の部位から粉々に砕け散り、扉から溢れて来る白い光に反射して輝いた。  粒子は散乱し、消える。  いっこうに痛みが来ない事に疑問を抱いたラウド達は目をうっすらと開け、そこに立っている青い髪の女性を見て目を見開いた。  揺れる長い青髪の毛先は純白。  ラウドは絶対に来る筈がないと思っていた青い精霊の背中を見上げ、小さく口を動かす。 「……何で、アンタが」  ラウド達を助けたリディアは自嘲するかのようにクスクスと笑い、天を仰いだ。 「本当は約束の邪魔なんてしたくなかった……ただ見ているつもりだったのにね」  リディアが大切にしているエステルとの約束は、ラウドの生き様が人間の強さを証明するというもの。  その為には、手助けなどしたくなかった。  ここまで来たのならば、ただ見守っていたかった。  しかし、感情と身体は時に反する動きをするようだ。 「貴方の所為よ、エンシェントルーパス」  ルースは荒い呼吸を繰り返しながら微かに笑った。 .
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