§83

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 フィリアが出掛けたのは本当に日が昇る前だった。  とは言え、曇天の上に夜明けの時間が比較的遅い為、時間はさほど早い訳ではなかった。王都ならば既に白い光が山々の間から覗いているような時刻。  ラウドは自分でコーヒーを作ると砂糖をふんだんに入れ、ぼんやりとしながらマドラーでそれをかき混ぜた。  大きなあくびをするルースの手にはまだ一口しかかじっていない板チョコレートが持たれている。 「……そういやあ、アイツの誕生日っていつなんだろうな」  ふと、昨晩の会話中の言葉を思い出してラウドは唐突に首を傾げた。テーブルの上に座っているルースはチョコレートにかぶりと噛みつき、ラウドを横目にする。 「突然どうしたのだ?」 「いや、昨日アイツさ、今年で十九になるって言ってたからさ。いつなんだろうって思ってな」 「む、そういう貴様もそろそろ誕生日か?」  そう問われると、ラウドは思わず口を閉ざした。  あと何日もせずにやって来る誕生日に対して、あまり嬉しさはない。  今から約二十年前にこの世に生まれ、様々な事を経て今まで生きてきた。 .
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