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幼い頃は誕生日が来るたびはしゃいでいた自分がいる。しかし、親と距離を置いてからは誕生日など嬉しくも何とも思わなくなった。
生まれてきた意味を感じられなかった日々ばかりが記憶の中に強く根付いている。
「……誕生日、か」
ここ六年、誰にも祝われた事はない。
毎日恐怖から逃げ、毎日走り続け、いつの間にかこんな歳になっていた。
死にたくないとは常日頃思っている。しかし、四月十五日という日だけは、何故生まれてきたのだろうかと思ってしまうのがお決まりだった。
この命が存在する意味は一体何なのだろうか。
今だからこそ明らかになったこの命の存在理由は、世界の為。
しかし、セルザは世界の為に戦わなくてもいいのではないかと言ってくれた。だからこそ、自分でも自分の為に生きようと思うようになった。
母と父がくれたこの一つの魂。
六年前の誕生日は一人だった。
去年までは一人だった。
今年はどうなのだろうか。
「……まあ、ガキじゃあるまいし」
今さら好きでもない誕生日を気にする自分の思考に呆れ、ラウドはグッとコーヒーを流し込んだ。
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