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フィリアは軽く肘を抱え、テーブルに寄り掛かる。
「正確には、明日で四年になるのかな。私も今年で十九になるし」
「そういやあ、俺ももうじき二十歳だな。……そっか、終戦か」
ラウドにとっては他人話に近く、フィリアにとっては当事者だ。そして、セルザもまた戦争の被害者だった。
窓ガラスが風でカタカタと揺れる。カーテンの外には夕暮れの雪景色が広がっていた。
「“明日はそっちのいくつかの町で追悼式があるのよね? あたしはこっちで一斉に黙祷するけど”」
セルザは手元にある資料を軽く流し読みすると、ぞんざいにパラリと落とす。その瞳にはどこか残念そうな思いが映っていた。
「はい、明日はお昼頃にフォースの隊員だけで式を行うそうです」
「“スタンヴィッチェでしょ? 墓前って、敵陣の身元不明者達の?”」
「ええ。それと、フォースの方々のも」
ラウドは二人のやり取りを見つめ、ぼんやりと明日の事を考える。
恐らく、フィリアは墓前には連れていってくれないだろう。そんな気がしてならない。
そもそも、軽い気持ちで彼女らが言う墓前に立ってはいけない気がする。
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