§105

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「もうやめろよッ!! アンタだって人間じゃないかッ!!」  クルスは恐怖で震える唇を必死に大きく動かし、から回る声など気にせず叫んだ。  しかし、ガルイースから返されたのは冷ややかな眼差し。 「……ああそうさ、俺はどう足掻いても人間だ」  地雷を踏んだとも言えるその怒りに満ちた表情には、全てので生き物に畏怖を感じさせる力があった。  何もかもを呑み込むような碧さ。  しかし、何もかもを拒絶する碧。  その瞳は大きく見開かれる。 「だから分かるんだッ!! 人間の汚さがッ、醜さがッ、その不必要性がッ!!」  魔力が一気に開放されたと思うと、一瞬にして当たり一面に霜が降りた。そして、ガルイースは迷わず矢を放つ。  矢は空気を切り裂き、切り裂いた空気は冷気を帯びて白く輝いた。  その矢に螺旋状に絡まる粒子で作られた龍は大きな牙を剥き出す。  ──これを食らえば間違いなく意識は飛ぶ。とはいえ、避ける余力と時間はもうなかった。  ラウド達は強く目を瞑り、これから来る衝撃に耐える準備をする。  しかし、空気が裂かれる音が大きくなったその時だった。 .
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