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「“式、参加するの?”」
「いえ、私は早朝に一人でこっそり行かせてもらいます」
ラウドの予想通り、フィリアは一人で向かう予定のようだ。ラウドはむすっと顔をしかめ、コーヒーを口に運ぶ。
何故か、いつもより大量に砂糖を入れた筈のそれがいつも以上に苦く思えた。
「そういう事だから、明日はちょっと出掛けて来るね」
「おう」
ラウドはあからさまに拗ねた態度を見せるが、フィリアは折れる気など更々ないようだ。苦笑してどうにか誤魔化す。
「“ところで、何でまたスタンヴィッチェなの? アンタ、コンデルツ部隊の配属だったでしょう?”」
セルザのふとした疑問の声を受け取り、フィリアは気まずそうに目を少しだけ泳がせた。どうやら、良い言葉を探しているようだ。
「……まあ、スタンヴィッチェの方が都会ですし」
「“そりゃあ、鍵の情報は集めやすいかもしれないけど……まあいいわ”」
何故か本当の理由を口にしない部下を問い詰めるように眺めた直後、セルザは椅子の背もたれに背中を預ける。
水晶球の中からはガヤガヤとした雑音が多く流れ出していた。
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