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関係者が大勢集まる現場であまり話さないようになったのはそのためだ。親しげに話している所を見られて、「ああ、俺たち実は・・・」というやり取りは、いつのまにか果てしなく面倒な作業に思えるようになった。
だが、俺の勤務する所轄が管轄するエリアの事件で、合同捜査本部が設置されれば、特別な理由がないかぎり、おれたちはペアを組む。彼が相手だと何かと行動しやすいのだ。
「はじめまして・・・」とあいさつしようとして、止めた。発見者である彼女はひどく、うなだれていた。自分の持ち合わせる知識では、彼女をリラックスさせてから、有益な情報を得ることは不可能だと思った。そんな相手に今更自分が警察であるという自己紹介も不要だ。
「すみません。入れ替わり立ち代わり。すぐ済ませますので。」
「はい。」
「まず、発見までの経緯ですが、午前8時ごろ大学へ出かけようとした際、隣の彼女の部屋の扉が数センチだけ開いていることを不審に思ったが、その時は特に気に留めなかった。午後1時頃帰宅した際もまだ扉が開いた状態だったため、名前を呼んだ後扉を完全に開くと入口から普通ではない彼女の姿が見えた。ここまでで訂正するところはありますか?」
「・・・いいえ。」
「では、彼女との関係ですが、特に親しいわけではないが、会えば一言、二言は話す程度だったとありますがこれは?」
「そのとおりです。」
「では最後になにか彼女に関して、なんでもかまいません、気になっていたことはありませんか。」
「・・・。なにもありません。」
「そうですか。ありがとうございました。」
彼女は、いったん何かを口にしようとした様子があったが、問い詰めてもその内容を話すことはないと判断した。
この会話がなされる間にも、みるみる彼女の顔色は悪くなっていったのだ。質問以上の答えは決して返そうとしない。その様子を見て、だんだんと心配になってきた。ほかでもない自分のことが。あんなものを目の当たりにした直後、普通に頭を回転させ、普通の会話を交わしていて、人として大丈夫だろうか。
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