壱-始まり-

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「俺はまだ少し仕事が残ってるから左側を使う、…お前は右側を使え」 そう言って押し入れから二組の布団を出し、左側と右側に敷く 言葉通りに俺は右側に移動する 「くれぐれも仕事の邪魔はすんなよ」 言葉で釘を打つ土方さん、そんな事言われなくても邪魔する意味も、元気も無い この時代に来た事と屯所に来るまでの数十分で身体は疲れきっており、休息を求めている 「解ってます」 それだけを言うと敷かれた布団に潜り込み、目を閉じる 直ぐに思考がふわっとし始め気付けば意識は飛んでいた 「……眠ったか?」 土方はチラッと仕切りの間から覗いて確認する 「………………………」 すでに目の前の人物は眠りに着いているようだ 「…長州の野郎がこんなに無防備に敵の目前で眠るかよ」 目線は未だにその人物、桜咲澪に注がれている 頭の切れる奴は殆どが厄介者と相場が決まってるが、こいつは…どうなんだろうな 普通なら澪の考えていた通り平隊士と一緒に大部屋で雑魚寝だろう だが土方はそうしなかった、それは何故か 澪が敵か、そうでないか見極めるためでもあったのだろう、だがそれにしては危険な掛けだったと言える その真意は本人、土方歳三と言う一人の人間にしか解らないのだろう 土方は確認を終えると机に向かい直し、書類整理を始めた
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