壱-始まり-

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「………っ」 ……どれぐらい意識を失っていただろう? 気付いた時には、痛みも何も消えていた 「死んだんじゃ…無いんだ」 その事実にほっとする けれど同時に嫌気も差した 「此処…どこ」 車に轢かれた筈なのに自分の身体には傷一つ無い上に見知らぬ場所に倒れていた 辺りは暗く、月明かりだけが頼りといった状況だ 暗さに目が馴れるまで自分の状況確認をしてみた 背中の辺りまでの黒髪は何故かポニーテールのように結ばれている 勿論自分で結んだ訳では無い 次に自分の服装だ、こっちも全く見覚えが無い 袴?と言うのか覚えが無いが服装はそれだ 上は水色の着物と言ったらいいのか袴と同じと見なすのか解らないがそんな感じ そして、段々と暗闇に目が馴れてくる どうやら、今居るのは森のようだ 「…どうしよ」 事実に驚きもせず喚きもせず、ただそう言った ………… 何かを感じ取ったのか少女は木の上に素早く飛び上がる 少しだけ高くなった目線の先に映ったのは、少女の知る日常の居場所では無かった そこは、少女の望んでやまない非日常の居場所だった 見下ろす先には町が広がっている、現代の町ではなく少なくとも江戸時代の物だという事は理解出来る
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