1人が本棚に入れています
本棚に追加
「魅!!!
こっち。」
麗さんの声に顔おあげる。
私はよく克己先輩達と待ち合わせをした、駅の前に立っていた。
ゆっくり足を動かし
麗さんの車に乗り込む。
麗さんに会ったら
言いたいこと、聞きたいこと、いっぱいあったのに
声が出ない。
麗さんも何も言わない…
「えっ…
克己先輩んち…?」
車を止めた麗さんに
初めて言葉を発した。
麗さんは申し訳なさそうに
そして切ない目を私に向けて
「もぅ、葬儀も終わってるの…
連絡遅くなってごめんなさい。
克己が死んだのは先月の終わりなの…」
私はそれに答えずに
車を降りて
克己先輩の家の
インターフォンを押した。
「魅ちゃん…
久しぶりね。」
そう言って克己先輩のお母さんが優しく微笑んだ。
「あ…
お久しぶりです…」
私は我にかえって
頭を軽く下げた。
私は克己先輩の家族には本当によく可愛がってもらってた。
こんなによそよそしい挨拶なんて、どれくらいぶりだろぅ…
見慣れた部屋
玄関を上がると
真っ直ぐに延びる廊下
右側のリビングのドア
そのドアを開けると
克己先輩の部屋に繋がる階段
何も変わってない…
ただ違っていたのは、
「み~ぃ!!」
と言って
走って階段を降りてくる
克己先輩がいないこと。
そしてお母さんに通された部屋。
「お邪魔します…」
そう言って玄関を上がると、
いつもとは逆の左側の和室へ通された。
入り口で私は動けなくなった。
目に入ったのは
克己先輩の優しく笑う写真と、
白い骨壺。
動かない足をやっとの思いで動かし
写真の前で座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!