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「事故だったの。
克己は、翔と車に乗ってた。
足を失ってからの克己は、毎日落ち込んで、私たちには見せなかったけど…
一人で泣いてた…
魅が来た日、克己に言われたの。
『魅とは、もぅ会わない…あいつは、幸せになる権利がある。
俺じゃ、あいつを幸せにできない。
…頼む。あいつが俺を忘れるまで、連絡しないで…』
窓の方を見つめて
そっと涙を流してた。
いつも強気な克己からは想像できなくて…
翔も私も何も言えなかった…」
麗さんが私のてを握った。
―?
握られた手を開くと
―指輪?
私は麗さんの目を見つめて、
「何ですか?」
と、聞いた。
「克己がね、もぅすぐ魅の誕生日だからって…
『もぅ新しい男でも出来たかな…
俺からなんて迷惑かもな…
…でも
渡したいんだ。』
って…
寂しそうに微笑んだの。
克己はね、
魅のために離れたの。
自分勝手かな?なんて時々笑ったりして…
翔はそんな克己を見ていられなかった。
…………あの日も…」
そう言って口を閉ざした。
私は、
克己先輩の気持ちを初めて聞いて、
涙が止まらなかった。
―何で自分から何もしなかったんだろう…
会いに来ることはできたのに、
怖くて逃げた…
私は何があっても
克己先輩を好きな気持ちは変わらないのに…
「麗さん、
あの日って…?」
私は麗さんの顔を覗きこんだ。
麗さんは涙を流しながら
重たい口を開いた。
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