押し入れに眠るもの

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  小学生の時に着ていた懐かしい服。 チェック柄の青いシャツや短パン。 広げると防虫剤の匂いがふわりと鼻に乗った。 すっぽりと今の体に隠れる服は自分の胸から臍辺りまでしか長さが無く、それは過去の思い出を連れてくる。 「懐かしいな、このシミ……醤油こぼして……」 母親にぶん殴られたやつだった。 「……」 箱を押しやり次に手を伸ばす。 今度はガムテープで封がしてあった。 開けると教科書やノートがぎゅうぎゅうに入っていた。 写真の蝶が表紙になった理科の教科書をめくると、わかりやすい大きな文字で雄しべと雌しべが解説してある。 理科室の人体模型を壊して先生に叱られたっけ。 紙製の平べったいお菓子の箱には三角定規やコンパス等、文房具が入っていた。 ちびた鉛筆は王冠をかぶるスライムと小さなスライムが森で跳びはね、久しぶりの再開を喜んでいるようだった。 次に引っ張り出した箱を開けた時、目当ての物を見つけた。 大好きだったクリアブルーのベーゴマやプラモデル、野球ボールに何だかよく分からない記憶にはない物…… その箱はかつての宝物が詰まっていた。 目的の物を取り出し膝の脇に置くと、気に入っていた筆箱が目にはいった。 縁が茶色くなった缶の筆箱を開けると、肌色の消しゴムでできたキャラクターが様々なポーズをとって密集している。 「キン消しかあ!なっつかしいなー!」 今見ると安い作りだが当時は大流行で、お小遣の殆どをガチャガチャに費やしたものだった。 「ははっ」 顔が綻んだ俺は輪ゴムで縛ったシールの束を取り出した。 これも大流行したものだ。
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