押し入れに眠るもの

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  それはウエハースチョコのおまけシールなのだが、面白くて格好いい神々が沢山いるビックリマンシールは俺達を熱狂させた。 レアが欲しくて毎日ウエハースを食っていた事を思い出すと、口の中にその味がありありと甦る。 ピチピチに張った輪ゴムの束の一番上に、輝くスーパーゼウスがいた。 キラキラと光を反射している。 これがウエハースの袋から出てきた時、俺は興奮のあまり叫びすぎて鼻血を出したのだ。 赤く滲むティシュを鼻に詰めていても、俺の周りには友達と知らないやつが輪になってシールを覗きこんできた。 あぐらをかいて手の中で光るシールを親指でなでる。 そっと箱に戻すと、この箱に不釣り合いなピンクにハートの包みが目に入った。 「なんだ?友美のやつが混じってんのか?」 妹の箱に戻してやろうと手に取った。 するとラッピングの折り返しから1枚のカードがぽとりと落ちた。 そこに書かれた丸文字を見て一気に記憶が甦る。 星やハートのシールに彩られた『ともくんへ』という文字。 それは俺の初恋だった。 甘酸っぱいような、足の裏がむずむずするような感覚。 意中の相手から貰ったバレンタインのプレゼントを、包装紙を破ってしまうのも勿体ないと思った当時の俺は大事に保管し続けたのだ。
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