押し入れに眠るもの

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  嬉しいような、恥ずかしいような照れ臭いような苦笑い。 誰もいなくて良かった。 ピンクの包みを箱に戻し蓋をしようとした時、『日』という文字とそれに続く漢字が半分見えた。 タイムスリップするような感覚で手を伸ばす。 5年生の俺が書いた日記帳。 夏休みの宿題だったのか、内容は友達と遊んだ話やクワガタ、川で泳いだり親父と行った野球観戦の様子が書かれていた。 「この頃はまだ僕だったんだな……」 いつからか自分の事を俺と言うようになった僕。 懐かしい思いで1ページから順に読んでいった。 最後のページは始業式の日らしい。 夏休み最後の日までで良いはずの日記は、9月の日付で終わっていた。 ヤンチャな僕が精一杯 背伸びをした文章が綴られている。 担任が描いた赤い大きな花マルと『大変よく出来ました』の桜型のハンコがあった。 俺は声に出して読んでみた。
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