押し入れに眠るもの

6/7
前へ
/7ページ
次へ
  9月1日(火)晴れ 僕の一日は小鳥のエサやりから始まる。   母の友達がくれた2羽の十姉まつだ。   クルルとピーコという名前をつけた。     ピーちゃんピーちゃんと声をよくかけるが   「クルルちゃん」とはめったによばない。     もっとも とうの小鳥たちは名前の自覚はないようだ。     「おはよう」とニッコリ笑ってあいさつしたあと水をかえる。   このニッコリはブスッとするより小鳥の気分もちがうように思う。   そのしょうこに よく飛びはねる   ただ 怖じているのかな。       クルルとピーコは2度にわたって玉子を産んだ。   だが産んだだけである。   考えてみれば無責任な親だということがわかった。   人間の世界ならゆるされないことだ。     15~16個の玉子を見殺しにするということは   はっきり言って死けいにもあたいする。   しかし小鳥はかわいいからゆるされるのである。     母は僕をよくしかる。   僕はかわいくないのだろうか。   いやいや そんなはずはない   ほら、こんなにチャーミングじゃないかと   鏡の前でうなずいているのを たまたま通りがかった妹にみられて   髪のみだれをなおしているふうに ごまかした。   やれやれ     そんなことより、僕の小鳥ちゃん(かってに私物化してしまった)に   学校に行く前、も一度   行ってくるかんねと のぞきこむ。   僕のアップに小鳥は   ビクッ!!とする。   ははは その姿もかわいいじゃないか。     今日もいい一日になりそうだ。          
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加