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しかし、飼い主はそんなお母さんを怒鳴りつけ、三匹を外へと連れ出した。 扉の奥からは、お母さんの悲痛な鳴き声が聞こえてくる。 三匹もそれに答えるように鳴いてはみるが、少しずつお母さんの匂いも声も遠のいていく。 大きな動く箱に揺らされながら辿り着いたのが、今三匹が眠りについているこの地だった。 飼い主は、ダンボールごと三匹をおろすと、自分の首に巻いていたマフラーをはずし、中へと入れる。 訳も分からず見上げた三匹の瞳に映ったのは、飼い主の辛そうな顔。 どうしてそんな顔をしているの? 三匹は、不思議そうに首を傾げた。 しかし、飼い主はダンボールから顔を上げ、踵を返して去っていく。 動く箱が開く音がした。 それに続けて、飼い主の声も聞こえてくる。 「家ではもう飼えないの。ごめんなさいね。誰か良い人に拾ってもらいなさい。」 これが最後の言葉だった。 しかし、三匹には状況が理解出来ない。 飼い主が去って三匹だけになってしまった後も、お母さんを呼ぶのは止めなかった。
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