by no means

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「母さん?」 「何ですか?」 「この、食卓に並ぶこれは何なんだ?」 「何なんだって、お父さん?金輪際ですよ。」 「母さん?」 「何ですか?」 「金輪際って、言葉だろ?食べ物じゃないだろ?」 「確かに金輪際は、言葉で食べ物じゃありません。」 「じゃあ、これは?」 「ですから、金輪際です。金輪際の西京焼きです。」 「やったのか?金輪際を西京焼きしたのか?なら、これは金輪際ごはんで、こっちは金輪際汁、金輪際サラダに金輪際の煮物、金輪際揚げに刺し身金輪際。」 「ちょっと金輪際を使って料理してみようと思ったら、次から次へとレシピが出てきちゃいまして、だったら、いっそのこと全て作ってしまおうと思いまして。」 「所謂あれか?」 「何ですか?」 「手抜きって事か?」 「お父さん?手抜きって何ですか?一生懸命に作ったんですよ?」 「言葉を料理すると言う事はすなわち、手抜きって事だろ?だったらだったで言ってくれれば、外食なり出前なりにしたよ。」 「酷いです!こんなに金輪際を料理したのに!何でそんな事を言うんですか!」 「それはな?母さん?お皿やお茶碗やお椀に文字が書いてあるだけだからだ!!」
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