冬の始まりの色

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太一はグラスを軽くあげて言った。 太一『さっきも言ったが、俺は親父も弟も嫌いじゃない。だが、家族だとも思っていないし、家族付き合いをする気もない。これからもだ。』 父はグラスを持ったまま黙っている。 太一が続ける。 太一『もう前から言ってるが俺は俺の生活をしている。別に関わってくれなくてもいい。だが、あんたはあれから事あるごとに連絡してくる。』 父は少し残念そうな顔をして口を開く。 父『お前には本当に悪かったと…』 再び太一が言葉を遮る。 太一『もういいんだって。謝ってもらおうと思って言ってるわけじゃない。俺もガキじゃないしそれなりに色々とわかってる。家族だとは思ってない。だが、知らない人間でもない。なら知り合いだ。知り合いが結婚するならめでたい話だろ?あんたと飲むのは初めてみたいだけど…乾杯』 そう言って太一は軽くグラスを傾けた。 父は表情を明るくしてグラスを傾けた。 当たったか当たってないかの距離でグラスは小さな音を鳴らす。 「チンッ」
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