最初の色

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『ただいま…』 一仕事終わらせた男は誰もいない家に帰り、輪ゴムで束ねられたお札や携帯をテーブルに置いて二人掛けの黒いソファーに座った。 2LDKのマンションの2階。 ここに3年間一人で住んでいる。 テレビをつけるが面白い番組もなくすぐに消した。 お香を焚いてからiPodをスピーカーに差し込みお気に入りのブラックミュージックを流す。 時計は22時を少し回ったところを差している。 佐原太一(さはらたいち) 26歳無職 右肘の内側に入れたトランプ絵柄のタトゥーからキングと呼ばれている。 キッチンの冷蔵庫から少し炭酸の抜けたコーラをコップに移して再びソファーへ。 今度は横になる。 ふぅ…と一息つくとテーブルに置いた三つの携帯のうちの一つが音を鳴らしながら光り出した。 今日は金曜日…仕事用の携帯がよく鳴りやがる。 手を伸ばして携帯を開く。 「着信 ヒーター」 通話ボタンを押して耳に当てた 太一『うぃす』 ヒーター『キング君お疲れっす!ヒーターです!今電話大丈夫すか?』 太一『大丈夫だよ』 ヒーター『4なんすけど?』 太一『あるよ』 ヒーター『あざす!お願い出来ますか?』 太一『いいよ!どこ?』 ヒーター『自分今ノイズなんですが』 太一『じゃあ国道に15分後で』 ヒーター『ありがとうございます!待ってます!』 太一『はいよっ』 太一は電話を切るとコーラを飲み干し、冷蔵庫から小さな透明のビニール袋をいくつか掴むと脱いだばかりのパーカーをまた羽織って家を出た…
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