冬の始まりの色

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タクシーの後部座席に並んで座ると渋滞気味の道を走り出す。 太一『歩いた方が早かったんじゃねえか?』 父『俺と二人で街を歩くなんて嫌かと思って気をきかせたんだが』 太一『それはいい判断だな』 父『弁護士だからな』 特に話すこともなく窓から流れていくイルミネーションや人を見る太一に一方的に父が話す。 父『今日はお前が生まれてからお前と一番話してるな。家にほとんどいなかった俺が言うのもなんだがお前は本当に手のかからない子だった。とはいえ途中からはお前も家にいなくなったようだが(笑)』 太一『…』 父『高校、大学にいかなかったお前は金もかからなかった。』 太一『別に行く気がなかっただけだ』 父『まぁそう言うな。俺は仕事しかしてこなかったんだから子供には金を使うくらいしか出来なかったがお前はそれすらさせてくれなかった』 太一『だからただ行きたくなかっただけだ』 父『まぁそうだとしても小遣いもやる機会すらなかったし。たまにこうやって会ってくれるならそんな時くらい払わせてくれ』 太一『…』 タクシーは賑やかな街をゆっくりと進み歩いて10分の距離を15分かけて目的地に到着した。
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