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「うっく、ぐす。えっぐ……」 ついさっきまで歌を唄いながら闇に染まった空を私は飛んでいた。 人間の里の近くの道から少し外れたこの場所は木々が多い。高度を低くし木々の間を縫うように進んでいく。 もちろんこんな時間に人の姿なんてあるはずもない。一気にこの場所を抜けようと速度を上げた。 ……のだが、気づくと自分の体は身を任せるように網に突っこみ、その勢いのまま地面へと墜落した。 幸い低かったので動けなくなるほどではなかったが、とても力ずくで網を引きちぎれそうにない。そもそもこの痛みがなくてもちぎれるなんてことはなかっただろうが。 下手にもがいても網がさらに絡みついてくるだけだし、この長い爪もこんな窮屈な態勢じゃうまく扱えない。 そこに大勢の足音と松明の明かりがこちらへと近づいてくる。 罠を仕掛けた人間だと分かりつつも、もしかしたらという小さな期待を覚え、息を潜める。 「おい!捕まっているぞ」 「ほんとか!」 だが、そんな期待もあっさりと打ち砕かれ、その集団が私の周りを囲う。
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