2人が本棚に入れています
本棚に追加
こうなったら後は強気でとってかかるしかない。弱気な姿を見せたら何をされるかわかったものではない
「なによ!ここ最近人間を襲った覚えはないわよ!」
覚えが悪い私でも幻想郷のルールは覚えている。意味もなく人間を襲うわけがない。
すると、私の声を無視して一人の男が周りに指示を出し始める。
「さぁ、とりかかるぞ。松明班は配置につけ。急ぐ必要はないからきちんとな」
その男は他の里の人間より体格もよく、信頼も得ているように見える。妖怪のことにも詳しいのか私の声に耳を貸そうともしない。
そんな態度にイラっとした私は、その男のどこか悲しみを見せるような瞳には気づかなかった。
「なによ!この私ミスティア・ローレライの声が聞こえないはずがないでしょ!何か言ってみなさいよ!」
そんな挑発にもなんの反応も見せない男らは捕らえられてる私などいないかのように話を進めてく。
もちろんその会話の内容は私のことなのだが……
「いいか。網からだしたら真っ先に口を塞げよ」
「近づいているうちに夜盲症にはされないんですか?」
「鳴いても動けないのだから他の妖怪に見つかって食べられるのを防ぐために普通は鳴きはしない」
「なるほど」
「もし鳴かれても帰り道は松明班のおかげで確保できてる。だからこの状態では安全だ」
「真っ先に口を塞ぐのは網から出したあとに鳴かれて逃げられるのを防ぐためですか?」
「そうだ。それさえ防げば後は力づくで押さえつけて縛り上げたらもう何もできはしない」
「わかりました!」
「松明班はあれだけの人数で火を持っていたらまず襲われはしない。時間をかけていいからきちんとやれよ」
「はい!」
この男は完璧に私のことを知り尽くしているようで私には全く対抗する手段はなかった。
唯一脱出できる網から出されて縛られるまでの間も、屈強な男たちに押さえられて妖怪の私の力でも動けなかった。
そして縛られているも男は後ろで「爪に気をつけろよ」など的確な指示を出し、もし私が暴れても対処できるように身構えていて、とてもどうこうできる隙はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!