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縛られ終わった私は既にがっくりとうなだれていた。爪はきちんと固定され、無理に動かそうとするならば縄ではなく自らの肉に突き刺すこととなる。
翼もきちんと体の前までまわされ、ぴくりとも動かせそうにない。
さっきまでの自らを奮い立たせていた強気な発言も音とはならず、うっすらと目尻には涙も浮かび始めていた。
そんな私を見て里の人間の一人が先ほどの私よりも強気な態度で怒鳴りつけてくる。
「お前のそのうるさい歌のせいでみんな寝不足なんだよ!こうなっても文句は言えないよな」
一瞬、私はそんな理由でと怒りの感情もわいたが、それも無意味なだけだと流れはじめた涙を隠すように先ほどよりも深くうつむいた
それに気分を良くしたのか、その男は私を小馬鹿にするように鼻を鳴らすと他の男たちにこう告げる。
「さぁ、早く里へ帰り待っている妻たちに成功の報告をしようじゃないか」
周りの男たちもそれに同意し、わいわいと騒ぎ始める。だが、それを制するように先ほどの体格の良い男が言葉を発する。
「すまないが先に皆で帰っててくれ」
それには皆驚いたようだったが、彼を信頼しているのか男らから理由を問いただすことはなく、これからのことを話し始める。
「そしたら帰って報酬の準備をしないとな」
「おいおい、宴の準備もだろうが」
「心配すんなって、わかっているよ」
そんな男らの言葉を聞いて体格のいい男は満足したように頷くと、先ほどよりも柔らかい口調で会話に混ざる。
「ははは、でも今日はもう遅いから宴会は明日の夜にしてくれよ」
「そうですね。わかりました」
「それじゃあ気をつけて帰れよ。おれを待たずに皆寝てくれて構わないからな」
「わかりました。それではおやすみなさい」
「おう、おつかれさま、いい夢見ろよ」
それを最後に集団は里へと引き返しはじめ、ここには私とその男だけが残った。
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