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男は松明の火が見えなくなるのを見送って私の方に振り向く。
「さぁ、立て。いくぞ」
男は縄を軽く引っ張り私に立つように促す。ただその声に荒々しさはなく、どこか寂しげな感じがあった。
私はそれを少し疑問に思いながらも、抗う術はないので素直にそれに従う。
男は私が立つのを確認すると、村とは反対の方向へ歩きはじめる。
私はどこに連れて行かれるのか聞きたかったのだが、それを男に伝える手段はなく、しぶしぶと男についていく。
ただでさえ歩くのがそこまで得意ではなく、しかも縛られていて動くのも不自由だったが、男はそのペースにあわせてかゆっくりと歩いてくれる。
しかし、その男は何を考えているのか下を向いて、本当に私のことを気にかけているのかわからなかった。
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