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「おれの家系は代々、妖怪から村を守る仕事だった。男のおれもそれに従い妖怪の知識だけを勉強してきた」
「だからあんなに詳しかったのね」
男はこくりと小さく頷くとそのまま話を続けた。
「そしておれも大きくなって妖怪を退治しはじめた。もちろん1対1じゃ勝てないから里のみんなの力を借りたり、罠を使ったりしてだがな」
「そりゃそうよね。普通の人間じゃ妖怪に敵うはずがないんだもの。あの紅白巫女とかはおかしいのよ」
「昔はこの仕事にやりがいがあった。里のみんなをおれが守っているっていう実感が心地よかった」
「昔は?」
「あぁ。だがすぺるかーどるーるとかいうのができて、妖怪はほとんど人間を襲わなくなった」
「そうよ!そのルールがあるから私は人を襲ってないのにいきなり捕まえれたのよ!」
私はさっきのことを思いだし無性に腹がたったのだが、男はそんなことは気にもとめず話を続ける。
「おれとしては仕事がなるのだが、それでも村のみんなが安全になるのならいいと思ったしどこかで働けると思っていたからこれには万々歳だった」
「そうよね。今では妖怪が人間の里に買い物にきたりするものね。まぁ一部だけど」
「最初は平和でいい日々だった。だが、徐々にそれに慣れてくるとみんな妖怪に恐れていた日々なんてなかったかのように考え始めた。まるで自分たちが一番強いかのように思い始めたのかもしれないな」
「そうよね。身体能力も負けていて、技術力もかっぱに勝てないのにね」
「それで今回は夜雀うるさいから捕まえて懲らしめようだって!?そんなことでおれに相談にくるなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある!」
「ビクッ」
私はいきなり声が大きくなって驚いたが、男がそれに気づいてすぐに謝りをいれてくれた。
「す、すまない。驚かせたな」
「い、いや、いいわ。続けていいよ」
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