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「今日は、なんだか機嫌がいいのう」
食事後のお茶を飲んでいると、おじいちゃんからそんなことを言われた。
「そう? 私、そんなに楽しそうに見える?」
「あぁ。なんとなく、な」
「ふふっ。なんとなくなんだね」
おじいちゃんが言うとおり、今日は気分がよかった。
体調がいいっていうのもあるけど、一番は、あの少年と会ったことだろう。
思い出したら、自然と笑みがこぼれていて。なにがあったのかと聞くおじいちゃんに、自分と似た病気を持つ人と会ったことを(薬をあげたことはふせて)話した。
「そうかそうか。そりゃあ話もはずんだじゃろう?」
「うん。でも、ちょっとしか話せなかったんだよね。名前だって、聞きそびれちゃったし」
「大丈夫じゃよ。きっと、また会えるとも」
「そうだとうれしいなぁ」
お茶を一口飲み、しばらくぼぉーっと湯呑を眺める。
本当、また会えたらいいんだけど。
そうしたら……今度はもっと、色々話したいな。
最初はやっぱり、病気の話題になりそうだけど。
「――もう、時期なんじゃな」
「? なにか言った?」
「いやなに。もうすぐ、ばあさんに会いに行くかとな」
「あ、じゃあ明日にでも、お花買わなくちゃ」
「急ぐことないぞ。今週中に買っておいてくれ」
この家には、私とおじいちゃんの二人だけ。おばちゃんは去年他界してしまって、両親は物心つく前に亡くなってしまった。
二階建ての家に二人だけっていうのは、時々やけに広く感じることもあるけど――少しずつ、それにも慣れつつあった。
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