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不安で手に力を込めていれば、ふと、ある考えが頭を過る。
もしかして……彼も、同じことを?
本当は、あの人よりも先に調べるために助けたんじゃないかって――そう思ったら、手から徐々に、力が抜けていった。
「決まりは守る。だが、そっちのやり方は気に入らない」
「気に入らないもなにも、別に違反はしてないだろう? 調べるのは気配の違う茶髪の女。該当者の血を調べること。それには吸血も許可されてる。――ほら、オレはなにも違反してない」
「関係無い者の血を吸ったくせに、よくもそんなことを言えるな」
「仕方ないだろう? こっちにはこっちの事情があるんだから。――アンタにだってわかるだろう? 特に、そこの子の匂いを感じた今なら」
私の……匂い?
二人が言ってることなんてわからないけど、それが私を調べる要因なんじゃないかと、頭を過った。
「――残念」
そう言って、少年はふっと笑みをもらす。
「いい物もらったから、そんなの感じないんだよ。――ま、匂いがいいのは認めるがな」
「へぇ~。今まで以上の物ができたなんて、そんなの初耳」
「オレも初耳だ。それを知ったのは――この子のおかげだからな」
「――えっ?」
次の瞬間、私は少年の腕の中にいた。
胸に顔を押し付けられ、どうしたものかと少しパニックになっていれば、ちょっと我慢なと、さっきのようなやわらかい声で、少年はささやいた。
じ、じっとした方がいい……んだよね?
恥ずかしいと思いながらも、今は大人しくするしかないと思い、黙ってその言葉に従うことにした。
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