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「この子はオレが調べる。お前らに渡したら、どうなるか分かったものじゃないからな」
「一方的に悪く言わないでくれる? そっちだって、裏じゃどんなことしてるんだか」
「……別に、否定はしない」
私を抱く腕に、少し、力が込められる。
なにかに耐えているのか。チラッと横目で見た少年の顔は、どこか辛そうに見えた。
「とにかく、今はお前と争うつもりはない。――だが、もしお前がその気なら」
途端、がらりとその場の雰囲気が変わる。
肌に突き刺さるような、冷たい感覚が辺りを包んでいき、
「ルールとか関係無しに、相手してやる」
最後の言葉が、なんとも鋭く言い放たれた。
私と話していた時とはあまりにも違い過ぎて……その言葉には、とても威圧感があった。
「…………」
「…………」
しばらく、無言の二人。
どれぐらいそうしていたのか。まだ一分も経っていないような、でも随分長いようにも感じられて。
呼吸をするたびに、酷く疲れてしまいそうなほど。この場の空気は、重いものになっていた。
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