/1

25/33

93人が本棚に入れています
本棚に追加
/567ページ
「…………」 「……ま、今は引いてやるよ」  最初に動いたのは――男性。  忌々(いまいま)しそうに言葉を発したと思えば、それからなにも仕掛けて来ることはなく、その場から立ち去って行った。  い、いなく、なった……。  途端、それまで張り詰めていたものが無くなり、思わず安堵のため息がもれた。 「――本当に行ったか。悪いな、いきなり抱いて」  そう言って、少年はゆっくり、私をベンチに座らせてくれた。 「どうして外に出た。しかもそんな姿で……」  外に行く格好ではないだろう? と、隣に腰かけるなり、心配そうにたずねた。  すぐにでも私にあるなにかを調べられるんじゃないかって警戒したけど、今のところ、危ない雰囲気は感じない。 「ゆっくりでいいから、話してくれないか?」 「…………」  優しく語りかける少年。  本当に心配してくれてるんだと感じた私は、ゆっくり、少しずつ言葉を発していきながら説明した。 「え、っと……気が付いたら、公園にいて」 「自分の意思ではないのか?」 「は、はい。声がしたと思ったら、目の前が、真っ白になってしまって……」
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加