93人が本棚に入れています
本棚に追加
/567ページ
「そうなる前に、誰かと会ってないのか?」
「誰にも。――最後に会ったのは、おじいちゃんだけです」
腑に落ちないのか、少年は小さく首を傾げる。
「魅了じゃない、のか?――体は問題無いか?」
「だ、大丈夫、です」
話していると、徐々に落ち着いてきたのか――目蓋が、重くなっていく。
「あのう……あなたは、いっ、たい――…」
目を開けるのが、辛い。
体も、なんだか段々重くなってしまって……こんな感覚は、初めてかもしれない。
「!? お、おい!」
声がするのに、それに答えることもできなくて。
睡魔に誘われるような感覚。その感覚に、私は身を委ねていった。
*****
夜が深くなる頃。
一人の少年が、とあるマンションを訪ねていた。その者は玄関からではなく、何も無い壁に向かい声をかける。
「我らが始祖。――どうか、その姿をお見せ下さい」
仰々(ぎょうぎょう)しく頭を下げれば、少年の前に、窓が現れた。
「……やはり、貴方でしたか」
ゆっくり窓を開いたのは、長髪の淡い茶髪をした一人の青年。彼は少々面倒臭そうな口調で、少年に声をかけた。
「嫌な予感はこれでしたか」
「あれ? オレが来ること、知ってたんですか?」
「なんとなく、ですけどね。――そこではなんですから、こちらへ」
中へ入るよう促すと、少年は慣れた様子で部屋へと入って行った。
最初のコメントを投稿しよう!