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「そうなる前に、誰かと会ってないのか?」 「誰にも。――最後に会ったのは、おじいちゃんだけです」  腑に落ちないのか、少年は小さく首を傾げる。 「魅了じゃない、のか?――体は問題無いか?」 「だ、大丈夫、です」  話していると、徐々に落ち着いてきたのか――目蓋が、重くなっていく。 「あのう……あなたは、いっ、たい――…」  目を開けるのが、辛い。  体も、なんだか段々重くなってしまって……こんな感覚は、初めてかもしれない。 「!? お、おい!」  声がするのに、それに答えることもできなくて。  睡魔に誘われるような感覚。その感覚に、私は身を委ねていった。  *****  夜が深くなる頃。  一人の少年が、とあるマンションを訪ねていた。その者は玄関からではなく、何も無い壁に向かい声をかける。 「我らが始祖。――どうか、その姿をお見せ下さい」  仰々(ぎょうぎょう)しく頭を下げれば、少年の前に、窓が現れた。 「……やはり、貴方でしたか」  ゆっくり窓を開いたのは、長髪の淡い茶髪をした一人の青年。彼は少々面倒臭そうな口調で、少年に声をかけた。 「嫌な予感はこれでしたか」 「あれ? オレが来ること、知ってたんですか?」 「なんとなく、ですけどね。――そこではなんですから、こちらへ」  中へ入るよう促すと、少年は慣れた様子で部屋へと入って行った。
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