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「それで……何の用事ですか?」
ソファーに座るなり、青年は静かに問う。
それに少年は、楽しげに話を始めた。
「実は調査中に、気になる子を見付けたんですよ」
“調査”という言葉に、青年は一瞬、眉をひそめた。
「収穫もないし、もうあっちの世界に帰ろうとしてたら、ある“匂い”を感じたんですよ」
「――どのような、匂いでした?」
その問いかけに、少年は口元を緩める。
「“花”ですよ。とっても甘い……香しい匂いがしました。どっからするのかなぁ~って探ってたら、横たわってる少女がいましてね。匂いをたどったら、その子からだったんですよ」
その時のことを思い出しているのか。
少年からは、やけに楽しそうな雰囲気がうかがえる。
「しかもその子、オレの眼が“効かない”んですよ。オマケに、アナタの匂いがしっ?!」
「吸血……したのですか?」
言葉を遮り、一瞬で間合いを詰める青年。
少年に向ける眼差しはとても冷たく、少しでも動けば殺されると思えるほど、青年は苛立っていた。
拳は固く握りしめられ、それを見た少年は、青年がかなり我慢しているのだと感じた。
それまでの口調は一変。少年は少しでも刺激しないようにと、言葉を選びながら話をすることにした。
「し、調べようとしましたけど……なにも、してないです」
「……そうですか。それで、ここに来た目的は?」
手を離したものの、未だ冷たい視線を青年は向け続ける。
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