/1

30/33
前へ
/567ページ
次へ
「無意識じゃあ、気を付けるのは難しいですね」  苦笑いを浮かべながら言えば、そんな私に先生は、優しい笑みを見せた。 「無理しないのが一番です。貴方は少々、頑張りすぎる所がありますからね」 「私は別に……ただ、少しでも普通に過ごしたいだけで」 「たまには、手を抜くのも必要です」  そう言って、ぽんっぽんっと、私の頭に軽く触れる。 「今は何も考えず、ゆっくり休みなさい」 「……そう、ですね」  それから私は、また意識を手放した。  今度は自分の意思で……ただ、眠りに落ちるために。  *****  空が白み始める頃。  少年は、一人の青年を探していた。その者は、長い間行方知れずとなっていた人物。その人物を探すよう、少年は命令を受けていた。  どこにいるのかと街中を探していれば――マンションに向かっている人物が、目的の人物であることに気が付く。  すぐさま後を追い、マンションに入ろうとする寸前で声をかけた。 「――あなたに、用があります」  静かな声が、辺り一面に響く。  それに青年は、ため息をはいてから、背後にいる少年に視線を向ける。 「話を、聞いてもらえますか?」 「…………はぁ」  今度は深く、少年にも聞こえるほどの大きなため息。  本日二回目の来訪者ということもあってか、青年はどこか諦めた様子で、少年に声をかける。
/567ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加