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「無意識じゃあ、気を付けるのは難しいですね」
苦笑いを浮かべながら言えば、そんな私に先生は、優しい笑みを見せた。
「無理しないのが一番です。貴方は少々、頑張りすぎる所がありますからね」
「私は別に……ただ、少しでも普通に過ごしたいだけで」
「たまには、手を抜くのも必要です」
そう言って、ぽんっぽんっと、私の頭に軽く触れる。
「今は何も考えず、ゆっくり休みなさい」
「……そう、ですね」
それから私は、また意識を手放した。
今度は自分の意思で……ただ、眠りに落ちるために。
*****
空が白み始める頃。
少年は、一人の青年を探していた。その者は、長い間行方知れずとなっていた人物。その人物を探すよう、少年は命令を受けていた。
どこにいるのかと街中を探していれば――マンションに向かっている人物が、目的の人物であることに気が付く。
すぐさま後を追い、マンションに入ろうとする寸前で声をかけた。
「――あなたに、用があります」
静かな声が、辺り一面に響く。
それに青年は、ため息をはいてから、背後にいる少年に視線を向ける。
「話を、聞いてもらえますか?」
「…………はぁ」
今度は深く、少年にも聞こえるほどの大きなため息。
本日二回目の来訪者ということもあってか、青年はどこか諦めた様子で、少年に声をかける。
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