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「やはり、まだ少し早いと?」  年配の男が、不安げな表情で問いかける。それに黒髪の男は、頷いて答えた。 「多少の誤差があるにせよ、力が働いている気配が無い。あるのは、“あちらの種族”の気配だな」 「!? では、これからあの子は……」 「危険になる可能性は高いだろう。ここの家だけでも、強化はしておく」 「お願します。この体では、盾になることも出来るかどうか」 「そんなことは考えるな。――“命は粗末にしないように”、だろう?」  その言葉に、年配の男は一瞬、はっとした表情を浮かべる。 「あなたが約束を破っては、彼女に怒られるのではなかったか?」 「――そうですね」  それは年配の男にとって、懐かしい者の言葉。  確かにそれを破ってしまえば、何をされるか分かったものじゃないですねと、年配の男は小さく笑っていた。 「せいぜい、叱られないようにしましょうかね」 「そうしろ。精々、しぶとく生きることだ」  和やかな雰囲気で進む話。けれど、その内容は極めて危険で。  これから起こるであろう出来事に、二人は警戒を強めていった。  ◇◆◇◆◇  公園まで来ると、私はベンチに座っていた。  別に体調を悪くしたわけではなく、どうしてか、ここで待っているよう言われてしまった。  ちょっと退屈し始めた頃、自分の方に走って来る一人の姿が見え――それが次第に、あの少年だというのがわかった。 「ごめんねぇ~。はい、コレお詫び」  そう言って、少年は私にフルーツの缶ジュースを差し出してきた。 「そんな、あなたにそこまでしてもらうなんて」 「気にしないの。ってか、名前で呼んでよ。呼び捨てなら尚いいけど」  私に缶を渡すと(半ば強引に)、少年は横に座り、ジュースを飲み始めた。
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