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 呼び捨てって言われても……。  見た目、私より年上に見える。  いきなりそんなことはできないし、なによりまだ、少年を信用しきれないでいた。 「呼び捨ては、ちょっと……。私より年上ですよね? せめて、「さん」付けでないと」 「年上なのは合ってるけど、な~んかよそよそしいんだよね。ま、美咲ちゃんがそれで呼びやすいならイイけどね」  私のことをなぜ知っているのか気になるけど、少年が――もとい、雅さんがあまりにも普通に接してくるから、もういいかなと、諦めにも似た感情がわいていた。  とりあえず今は、名前のことよりも、核心をついたことを聞くべきだろう。 「……あのう」  問いかける私に、雅さんは視線をこちらに向け、ん? と小さく首を傾げる。 「今日会いに来たのは……襲うため、ですか?」 「はははっ! ストレートだねぇ~。安心してよ、襲ったりしないから。オレが美咲ちゃんに、興味があるんだよ」  笑顔で言われ、私は少し呆れたようにため息をついてしまった。  デートの理由にはなってる気がするけど……なんだか納得いかない。 「別に……私に面白いところはないですよ?」 「オレからしたらあるんだよ。例えば――」  手にした缶を置くと、すっと耳元に顔を近付けるなり、 「オレと同じ病気、とかね」  と、なんとも艶のある声でささやいた。  恥ずかしさと驚きで思わず後退すれば、さっきまでの雰囲気とは一変。雅さんが、あの夜のように大人びて見えた。 「お、同じ、って……」 「ウソじゃないよ。ま、急に言っても信じられないだろうけど」  そう言った後の雅さんは、また明るい雰囲気に戻っていた。  もし……もし本当に同じなら、私も、二人のように動けるの?  確かに私は、二人に興味をもってる。あそこまでの身体能力が欲しいってわけじゃないけど、ちょっと長く走れるぐらいの体力は欲しいと、そう思った。
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