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艶やかな声に、ドキッと跳ね上がる心臓。間近で聞くには、まだ慣れそうにない。
「いいから……とっとと離れろ!」
そう言って、月神君は雅さんと反対側に立ち、私の肩に手を置く。
「? あ、あのう……?」
今私は、二人に挟まれた状態。私の頭上で、二人は火花を散らしていた。
「早く離せ」
「それはこっちのセリフ。デートしてるんだから、ジャマするなよ」
一瞬、月神君の顔が険しくなった。
このままだと、二人の仲がどんどん悪くなるのは目に見えている。
「あ、あのう。私は……」
「そんなことは関係無い。こっちは彼女に用があるんだ」
「用事ならここで済ませてよ。そして、すぐに帰って」
「だ、だから、私の話を……」
「随分と偉そうだな。――あの夜、逃げたくせに」
今度は、雅さんの顔が険しくなった。
すぐ笑顔に戻るも、心なしか、目が笑ってないように思える。
お互い一歩も引かず、未だ私の声も届かない。あまりにも聞いてくれない二人に、さすがにそろそろ……ふつふつと、怒りが込み上げてくるのを感じた。
「美咲ちゃんに嫌われると思ったから引いたんだよ」
「だから話しをっ」
「どうだかな。ただ怖かっただけなんじゃないか?」
一向に話を聞いてくれない二人。
次第に話しかけることをやめ、私は無言になっていった。
「どーでもいいだろう? 今はどっちが美咲ちゃんといるかって話しなんだけど?」
「なら、お前が手を引け」
この後どちらが私と過ごすか、みたいな話の流れ。
相変わらず、私のことなど無視して話が進んでる。
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