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「男だな。年齢は30代半ばって所か。だが……信じられないな。一人じゃねぇか」
意外だった。
向こうはこちらの情報を把握しているとはいえ、まさか一人で来るとは思っていなかったのだ。
和樹は待ち合わせの意味でここで待っていたものの、会った後にそのまま帰す気など毛頭無い。
相手からの情報を一つ残らず全て絞り出した後は、殺すか一生動けなくするつもりでいた。
この仕組みについても要はそのためのものだ。
行きはすんなり行かすが、帰りは絶対に帰さないための仕組みなのだ。
取り付けた罠の数も数えきれたもんじゃない。
向こうもこちらがそういった対応をしてくることは予想に容易いだろうに、何故一人なのか。
陽動か?雇われか?他人か?
それとも頭がおかしいのか?
もしくはよほどの腕の持ち主か?
……頭の中に浮かぶいくつかの可能性。
まさか電話をしてきた本人ということは無いだろう。
まるで関係のないその辺のゴロツキを雇い、自分の代わりとして送り込んできている可能性も十分にある。
さらには、ここで気を引き付けて他のルートから侵入なんて可能性まで考えられるのだ。
こればっかりは相手の情報が無い以上、可能性はそれこそいくらでも考えられるが、とにかく相手は真っ正面から一人で来た。
その事実は変わらない。
結局、
接触してみないと分からないということだ。
和樹はあらかじめ用意していたプランの一つを選び出し、対応の準備を整える。
本番が近づいてきていた。
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