162人が本棚に入れています
本棚に追加
コンコンコン
ドアから鳴る3回ノックの音。
結局、男は正面入口からこの2階の部屋まで一直線にやって来た。
途中までのモニターや時間などを考えても、たった一度すら迷っていない。
このビルの構造はおろか、和樹のいる部屋まで特定していたのだ。
和樹はあくまでも冷静になろうと、今の現状を改めて把握する。
パソコンやモニターはあらかじめ用意していた通りの手順で既に隠している。
いざとなった時の自分の逃げ道も確保済みだ。
男を帰さないための仕組みや罠も万全。
発動させる準備はいつでも整っている。
戦いになった時の装備も……ある。
間違いない。
大丈夫だ。
「どうぞ」
和樹が意を決してそう返事を返すと、ドアは一呼吸置いて開かれた。
入ってきたのは30代半ばほどの男性。
黒いコートを着ていて、身長は170ほど。
穏やかな雰囲気を持ち、特に威圧感や危険な感じなどはしなかった。
一見すると、まるで普通の平均的なサラリーマンのようだ。
だが、
和樹はその程度のことでは気など抜かない。
落ち着いて、どんな事態にも対処できるよう冷静に応じる。
「初めまして。お電話いただきました方でお間違いございませんね?本日はわざわざこのような所まで足を運んでいただき、ありがとうございます」
ニコリと笑顔。
少し嫌味の入った含みのある微笑みを向ける。
まずは様子見。
相手の出方、スタンスを探る。
最初のコメントを投稿しよう!