【第一章】来訪者

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コンコンコン ドアから鳴る3回ノックの音。 結局、男は正面入口からこの2階の部屋まで一直線にやって来た。 途中までのモニターや時間などを考えても、たった一度すら迷っていない。 このビルの構造はおろか、和樹のいる部屋まで特定していたのだ。 和樹はあくまでも冷静になろうと、今の現状を改めて把握する。 パソコンやモニターはあらかじめ用意していた通りの手順で既に隠している。 いざとなった時の自分の逃げ道も確保済みだ。 男を帰さないための仕組みや罠も万全。 発動させる準備はいつでも整っている。 戦いになった時の装備も……ある。 間違いない。 大丈夫だ。 「どうぞ」 和樹が意を決してそう返事を返すと、ドアは一呼吸置いて開かれた。 入ってきたのは30代半ばほどの男性。 黒いコートを着ていて、身長は170ほど。 穏やかな雰囲気を持ち、特に威圧感や危険な感じなどはしなかった。 一見すると、まるで普通の平均的なサラリーマンのようだ。 だが、 和樹はその程度のことでは気など抜かない。 落ち着いて、どんな事態にも対処できるよう冷静に応じる。 「初めまして。お電話いただきました方でお間違いございませんね?本日はわざわざこのような所まで足を運んでいただき、ありがとうございます」 ニコリと笑顔。 少し嫌味の入った含みのある微笑みを向ける。 まずは様子見。 相手の出方、スタンスを探る。
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