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核心をついた。
文脈も脈絡もフル無視で、直球のドストレートだ。
まだ名前すら聞きもしていない段階から少し早すぎたかとも思ったが、誘ってきたのはそもそも向こうだ。
それに、この件については覚悟も対応も、最終的結論まで何もかも決めているときている。
別に問題は無い。
和樹は目つきを変えて男の言動に注視した。
ほんの少しの動作だって見過ごす気はない。
しかし、
男はそんな和樹の様子に気付いたのかそうでないのか、ニッコリと意味深な笑みを浮かべた。
「まだその話には早いでしょう。もう少し友好を深めてからゆっくりとお話しましょうじゃありませんか、桐谷和樹さん」
自分から誘っておいてこの反応だった。
さらにその上……
「……まだ……名前を名乗った覚えは無いのですがね」
さすがにイラついて少し殺気を出した。
冗談の類ではなく、本物の殺気だ。
大抵の者は、これで腰を抜かすか動けなくなる。
しかし、
「電話で申し上げたではありませんか。今さら驚くようなことではないでしょう?」
男に動じた様子は全く無かった。
完全に余裕綽々だ。
それどころかまたしても和樹を怒らせるような発言で返してきた。
和樹も本気で怒って殺気を放出したわけではないものの、ここまで明確に只者でないと分かると、少し対応を変えるべきかもしれない。
余計な問答は、無駄どころかマイナスな影響を及ぼす可能性もある。
どうせ生かして帰すつもりも無いのだ。
話が拗れたとしても問題ない。
相手の器の底を判断するためにも、ここは怒りのスタンスでキリキリと話を進める。
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