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日本の、とある地域にひっそりと潜む一つの裏路地。
昼間でもどこか暗い雰囲気を醸し出すその路地には、まともな一般人などまるで通ることはない。
完全に表世界と隔絶された世界。
表立って開いてる店など一軒も無く、あるのは危険な香りのする危な気な事務所と、荒廃して原型をとどめていない 不気味な建物。
そこに、ずいぶんと古びた一軒の小さなビルがある。
裏路地の雰囲気に完全にマッチしたそのビルは、薄汚れた傷や塗装の剥がれも一切隠す様子も無く、特に目立つことも無い。
まるで背景の一部のような……今にも消えてしまいそうなビルだ。
そこに、ある一人の男が住んでいる。
「……遅い」
男の名は『桐谷和樹』といった。
16歳だ。
まだ顔付きも幼く、その上、身長も平均より低い。
体格も非常に小柄で、一見すると中学生を思わせる。
さらに、
瞳は大きく、髪は少しだけ長かった。
男に対して言うべきものかは分からないが、可愛い顔だ。
なんと男相手にナンパまでされたことがある。
こんな荒れた地域のビルの一室を持つにはずいぶんと若すぎる年齢、かつ見た目だが、彼自身に物怖じや焦りはまるで無かった。
それが当たり前とでも言わんばかりに、堂々とそこに居座っている。
それは、不自然なのにどこか自然であるかのように思わされた。
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