162人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
和樹は少し悩む素振りを見せた。
男の話の信憑性については、ここまでの言動である程度信じても良いものだと判断している。
いや、そもそも今までに開示されているだけの情報だけでも、和樹にとっては十分すぎるほどに重要なものなのだ。
準備どうこうについては気にはなっても、深追いしなければならないほどのレベルではない。
この男一人に知られているだけでも危険なのだ。
わざわざ話をズラしてまで聞く必要はない。
要は、男に不穏な行動を取らせないようにすればいいのだ。
和樹は閉じていた口を開く。
「……それで、その手札と引き換えに、あなた方は私に何を求めているのですか?」
和樹はとりあえず男の話を聞いてみることにした。
主導権は握られてしまったが、悪い形じゃない。
今はこの男から少しでも多くの情報を引き出すことが重要だ。
なんせ、実はもう男はこのビルからは出られないようになっている。
罠は男がこのドアを開けた時点で自動で発動するようになっていたのだ。
今頃は全トラップがドアの向こう側で今か今かと待ち構えているはず。
となれば、
和樹が今最も注力するべきは、男が外部に連絡することを防ぐことだ。
不穏な行動のランク付けとして、それは最上級に位置するものだ。
絶対に取らせぬよう全力の注意を払う。
そしてその上で、和樹は男の背景に位置する規模を把握しておかなければならない。
後で男から聞き出して確実に始末するためだ。
男からの聞き出しはどうせ暴力的に無理矢理なものとなるだろうが、その手段に移る前に出来る限りの情報は得ておきたいとも和樹は思っていた。
なんせこの男は得体が知れなさすぎる。
事は、慎重に進めるべきだ。
最初のコメントを投稿しよう!