162人が本棚に入れています
本棚に追加
「とてもシンプルなものですよ。この点を見れば、取引というよりはむしろ依頼と言った方が正しいかもしれません」
「……何です?」
和樹は警戒心を最大限に発揮しながら、慎重に言葉を発した。
最初から何事においても相手の要求を呑むつもりはないが、受けるというポーズは必要だ。
来るべきその時には、しっかり油断しておいてもらわなければならないのだから。
「あなたに依頼することと言えば決まっているでしょう?抹殺ですよ、抹殺。あなたには、私の言うある一人の男を、完全完璧にこの世から始末していただきたいのです」
「…………」
和樹はつい黙ってしまった。
そう、
和樹の職業は『殺し屋』。
この現代社会で、主に暗殺を生業として生きている。
非合法な依頼金と引き換えに、特定の人物を殺す仕事。
裏の仕事で、かつ和樹は依頼人と直接会って仕事を取ることはしないため、容姿が有名になることはないが、その仕事名はその世界ではひどく有名だった。
いや、仕事名というのは正しくない。
字名とでも言うべきか。
彼に頼んだ仕事の達成率は100%。
狙われたが最後。
決して逃げられない。
だから、
彼はその世界の住人たちからはこう呼ばれているのだ。
『死神』と。
最初のコメントを投稿しよう!