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「ちなみにお金も相応のものをお支払いさせていただきますよ。個人情報はあくまでも依頼を受けて成功していただくための保険です。マトモに頼んで受けていただけるとも思えなかったものでね」
「…………」
和樹はまたしても黙ってしまった。
黙るのは良くない。
何か対処すべきだとは分かっている。
だが、
これはいくらなんでも予想外に過ぎていた。
相手の意図する所が……単に依頼?
なら客とみなすべきか?
いや、対処の建前はそうするべきだが、受けるわけにはいかない。
例え客であろうと、このまま捨て置くことは出来ない。
始末するのは、この男とその背景の人間も同じだ。
和樹は頭の中で方針を組み立てる。
2秒も時間を掛けてしまった。
和樹は口を開くと、答える。
「そういうことでしたら、あなた様は私にとってお客様ですね。詳しいお話を伺ってもよろしいですか?」
今はこれが精一杯だった。
話を一蹴して制圧することも候補に入れたが、わざわざ戦闘しますと宣言して警戒させる必要はない。
和樹は決めた。
この男はすぐにでも制圧すべきだ。
油断させて、一息に拘束する。
背景の人間は、身包みを剥いでからゆっくり尋問する。
これ以上は、話に付き合わない方がいい。
和樹はそう思った。
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