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「ありがとうございます。あなたならそう言ってくださると信じておりましたよ。それでは、まずはこちらが対象者の写真となります」
男はそう言って、懐から一枚の写真を取り出し、机に置いた。
和樹はそれを見て、顔をしかめる。
その写真には、黒い鎧のようなものが映されていた。
「こちらが、あなたに依頼するターゲットの顔写真です。もちろん差し上げますので、そのまま手に取ってお待ちください」
男はそう言ってニコリと微笑んだ。
和樹は顔を顰める。
ただの客としてみなしたとしても、この写真はあり得ない。
「申し訳ございません。ターゲットについての写真は、基本的に素顔でお願いしております。この写真の方は鎧を付けていらっしゃいますね?これでは厳密に誰なのか判別がつきませんので、別の写真はございませんか?」
なるべく丁寧な言い回しを心掛ける。
ターゲットに対しても尊敬語を使ったのは、小さな意趣返しだ。
本来は依頼人に対して、依頼人が殺したがってる人間に尊敬語を使って説明などしない。
まぁ、この男はそんなことで気を悪くするほど可愛い性格はしていないだろうが。
「あはは。普通に見たらそうですよね。コレを鎧と判断すれば、あなたの言い分が正しいでしょう。でもね、桐谷和樹さん。私が持って来たこの写真は、鎧姿ではなく、素顔をそのまま持ってきたものですよ」
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