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「……仰ってる意味が……分かりかねます。これが素顔……ということは、この鎧が鎧ではなく、単に素肌だということでしょうか?」
和樹は疑心満々にそう尋ねた。
何のためのジョークなのか意図が読めない。
さっきまでと違い、もう話は進んでいるのだ。
男がここで和樹に嘘をつくことに、何のメリットも見出せない。
しかし、
「ええ、そうです。この黒いゴツゴツしたそれが、このターゲットの素肌なんですよ。気持ち悪いでしょう?私もそう思います。本当に1日でも早く葬り去っていただきたいのです」
男は至極真っ当な表情でそう返してきた。
メリットも何も、これはそもそもジョークではないと、その表情が言外に告げていた。
和樹はつい黙ってしまう。
精神異常者か?と、頭の中にはクエスチョンマークしか浮かばない。
何を真面目な顔をして、おかしなことを言っているのか。
「……本当だとすれば、人間じゃありませんね。こんな金属のように固そうな肌の人間は、私は今までに見たことがない」
和樹は冷たくあしらった。
今行ってる話は男を制圧する機を伺うためのものだが、他に情報を引き出すという意味合いも含まれている。
与太話に付き合う義理はない。
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