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「おお、さすがは『死神』ですね。よくぞ気付いてくださいました。そうなのです。この男は人間ではない。『悪魔』なのです。しかも、映されているのはその『悪魔』たちの王。『魔王』です」
しかし、
男はまるでめげることなくそう返してきた。
和樹はつい黙ってしまう。
体の力が静かに抜けて行くのを感じた。
本当に、何を言っているのか。
冗談にしたって笑えない。
いきなり宗教のような話になってきた。
これまでの得体が知れない言動も、単に頭がおかしかっただけなのか?と、和樹は拍子抜けを通り越して脱力感に見舞われるほどだった。
だとすれば、さっきまで真剣に対応を考えていた自分がひどく虚しく感じてしまう。
自分のやる気がいきなり損なわれていくのを感じてしまう。
それでも、
男はそんな和樹の様子に気付いているのかいないのか、話をどんどん先に進めていく。
「この写真の男の名は『ウィル・ドラジェノール・アトラシカ』といいましてね。先ほども申し上げた通り、悪魔たちの王なのです。私たちの『世界』では、主に悪魔と人間の二つの種族があって、互いに世界を掌握しようと戦争しているのですが、この男がひどく邪魔なのです。我々人間側も、この男によって何度苦しい場面を迎えたか分かりません。これまでの歴々の魔王を見ても恐らく最強の敵です。おかげで今の人間側はかつてないほど劣勢に陥り、打開策を未だ見つけられずにいます。悪魔族は元々長寿ですから寿命を待つことも出来ませんし、戦況は日々一刻と悪くなる一方なのです。もはや、こいつを殺さない限り人間側の勝利はないものと言って良いでしょうさらには……」
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