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話が長すぎて途中から聞くのをやめてしまった。
『悪魔』に……『魔王』に……『我々の世界』ときた。
人間と悪魔が戦争してて人間側が今劣勢……?
悪魔は長寿だから殺さないと負ける……?
どこのファンタジーだ。
そういうことを話したいのなら、話す相手を間違えている。
そういうことは、左腕を常に抑えていたり、見えない敵と戦っていたりしている中学生にでも話してやればいい。
和樹は……純粋にそう思った。
和樹も年齢的にはまだそういうことを引きずっていてもおかしくない年頃だが、残念なことに和樹はそういうものとは無縁の、リアルな世界で生きてきた。
殺し屋も設定などではない。
本当に人を殺し、本当にお金をもらい、本当にそれで生活しているのだ。
だからこそ、
和樹は人を殺すという重大さをよく分かっているし、お金の価値を知っているし、それで生活していく難しさをよく理解している。
その道を選ぶことの覚悟も……和樹にはしっかり身に付いている。
今までだって、楽しいことより辛いことの方が圧倒的なほどに多かった。
本当の意味で、遊びではないのだ。
もしかしたら、この男は和樹のことをゴッコと勘違いしているのか?
だとすれば不愉快だ。
そんな、親に養われて裕福な生活をしてそうな子供が考えそうな設定と同列にされることに不快感を禁じ得ない。
和樹は手にナイフを忍ばせる。
男がこれほど熱く語っている真っ最中だ。
機としては、悪くない。
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