【第一章】来訪者

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「なるほど……。すごいですね。ナイフ、まったく気づきませんでしたよ」 「ッ!!」 男の後頭部から声が聞こえた。 何故喋れるというのか。 今は出血多量で、大量の血の中に口を付けた状態のはずだ。 顔の位置も真正面に地面と向き合ったまま固定している。 口を開いて声を出す余裕など無いはずだ。 和樹は警戒してもう片方の手からもナイフを出す。 念には念をだ。 指の一本か二本は切り落として、戦闘する気力を奪っておくべきだと判断した。 だが、 男の指はまるで見えているかのように和樹のナイフを躱し、バタバタと動き回った。 動きが異様に速くて怖かった。 この状態でその活力が不思議だった。 そして、 「ちょっと話しにくいので、この手は離してもらいますね」 男の手は、いや腕は、そこから背中の方に回ったかと思うと、前にいる和樹の顔を逆手に掴んだ。 和樹は思わずの出来事に混乱する。 人間の腕は、そういうことが出来るようには作られていない。 「最初から信じてもらえるとは思っていませんでしたので、わざわざ待ってはいたものの、まさかここまで気付けないとは思いませんでした。さすがは死神ですね。待っていなかったら、いつの間にか殺されている所でした」
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