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「なるほど……。すごいですね。ナイフ、まったく気づきませんでしたよ」
「ッ!!」
男の後頭部から声が聞こえた。
何故喋れるというのか。
今は出血多量で、大量の血の中に口を付けた状態のはずだ。
顔の位置も真正面に地面と向き合ったまま固定している。
口を開いて声を出す余裕など無いはずだ。
和樹は警戒してもう片方の手からもナイフを出す。
念には念をだ。
指の一本か二本は切り落として、戦闘する気力を奪っておくべきだと判断した。
だが、
男の指はまるで見えているかのように和樹のナイフを躱し、バタバタと動き回った。
動きが異様に速くて怖かった。
この状態でその活力が不思議だった。
そして、
「ちょっと話しにくいので、この手は離してもらいますね」
男の手は、いや腕は、そこから背中の方に回ったかと思うと、前にいる和樹の顔を逆手に掴んだ。
和樹は思わずの出来事に混乱する。
人間の腕は、そういうことが出来るようには作られていない。
「最初から信じてもらえるとは思っていませんでしたので、わざわざ待ってはいたものの、まさかここまで気付けないとは思いませんでした。さすがは死神ですね。待っていなかったら、いつの間にか殺されている所でした」
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