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「く……っ」
和樹は男が何を言っているのか分からなかった。
この腕もおかしなくらい力が強い。
振りほどけない。
こんな不自然極まり過ぎた体勢なのに、力の強さは常人のそれを圧倒的に上回っている。
身動きすらも取ることができない。
制圧していたはずなのに、あっという間に制圧し合っている状態に持ち越されてしまった。
男の逆手になった手は、和樹のコメカミを強く押し続け、その力が抜ける気配は一切見えない。
男の腹からは血が流れ続けているはずなのに、その影響も全く見えない。
何がどうなっているのかさっぱりだった。
こんなビックリ展開は初めてなのだ。
人間技じゃないにも程がある。
だが、
混乱してる中でも分かったことはある。
男はさっき、「待っていた」と言っていた。
つまりはそういうことだったのだ。
男は、和樹が武力行使に打って出るのをずっと待ち続けていたのだ。
それが一体何のためかは分からないが、『嵌められた』。
その事実だけは、よく分かった。
「くそ……っ」
和樹の手から力が抜ける。
コメカミをこれほど強い力で押さえつけられていては、そうなるのは当たり前だった。
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